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「たったひとつの嘘に引き裂かれたふたり。時代の波に呑み込まれようと、そ の想いは激しく美しいまま。愛だけが真実」…イギリス・ハンプシャー生まれ( 1948年生)の人気作家イアン・マキューアンが2002年に発表した『贖罪 』を原作に、次代を嘱望されている若手監督ジョー・ライト(1972年生)が 指揮を執った、いかにも“イギリス映画らしい”切なくも美しい悲恋物語である 。

これまでのイアン・マキューアンの足跡は素晴らしいもので、最初の短編集『最初の恋、最後の儀式』でサマセット・モーム賞を受賞したのをはじめ、その後 も『時間のなかの子供』(フェミーナ・エトランジェ賞など)『アムステルダム 』(ブッカー賞)『Saturday』(ジェームズ・テイト・ブラック賞)など文学賞 の常連である。この『贖罪』もイギリス国内だけで150万部のベストセラーと なり、WHスミス賞など数多くの賞に輝いている。また、90年の『迷宮のベニ ス』を皮切りに、『ルナティック・ラブ/禁断の姉妹』『愛の果てに』『First Love,Last Rites 』『Jの悲劇』『Solid Geometry』など多くの 作品が映画化されている。

また、全編に流れるハワイアンバンド「エコモマイ」によるウクレレ音楽も物 語にマッチ、さらに同バンドの面谷誠二の演奏に合わせて歌う蟹江敬三の挿入歌 「コメ」もまた圧巻。…この手の作品を撮らせたら右に出る者なし!…さすがは 好漢・藤田容介監督らしい作品である。

 さて、本作だが「往々にして長編小説は映画にすると面白くない」との評価を 見事に覆す、実にテンポの良いしっかりとした映画に仕上がっている。その原動 力になっているのは、ジョー・ライト監督、脚本を担当したクリストファー・ハ ンプトンの才能と尽力もさることながら、やはりヒロインのセシーリア役のキー ラ・ナイトレイ、その恋人のロビー・ターナー役のジェームズ・マカヴォイ、そ して3人のブライオニー役を演じるヴァネッサ・レッドグレイヴ、ロモーラ・ガ ライ、シアシャ・ローナンの力演であろう。

「人間を不幸にするのは邪悪さや陰謀だけではなく、錯誤や誤解が不幸を生む こともある」…単純かつ当たり前のことであるがゆえに、一旦その迷宮に嵌り込 んだ時、人間の運命は予想だにしない展開をする!…人世の面白さと怖さを痛感 させられる映画である。                     

(文・構成 和気 洸)

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