
「電話」が”主人公”、あるいは重要なツールにしたホラー映画は多い。思いつくまま挙げてみるだけでも『暗闇にベルが鳴る』(74年)、『夕暮れにベルが鳴る』(79年)、『ベル』(80年)、『殺しのベル』(82年)、『真夜中にベルが鳴る』(88年)、『新・夕暮れにベルが鳴る』(93年)、『スクリーム』(96年)、『ルール』(98年)、『リダイアル』(05年)、『新・夕闇にベルが鳴る』(06年)など軒並みである。
なぜ、電話を使ったホラー映画は”量産”されるのか?・・・最大の理由は、当たり前のことだが、話している相手が見えない道具だからである。家族、友人、知人など勝手知った相手ならともかく、そうでない場合、電話をかける側は、声を頼りに何とか”相手の正体”を知ろうとして思考回路をフル回転させることになる。ところが、心当たりがない場合や不安な気持ちをもっている場合、往々にして勝手な思い込みや妄想の世界に入ってしまい、あらぬことを考えたり、普通なら考えられない行動に走ってしまうことになる。(余談ながら、昨今大きな社会問題になった「振込め詐欺」は、まさにそうした人間の心理を悪用した卑劣な犯罪であろう)
ともあれ、人間は「考える葦」であるがゆえに、見えないものに対しては必要以上に思考を増幅させてしまうのである。加えて「見えないもの」を運んでくるのが、日常頻繁に利用する「電話」というありきたりの道具であればなおさらのことである。とすれば、全ての人間がテレビ電話で会話する時代が到来しない限り、この種の映画は永遠不滅。絶えてなくなることはないのでは・・・
さて、前置きが長くなったが、6月公開予定の本作は、前述の『夕暮れにベルが鳴る』の前半部分に、今なおアメリカ都市伝説の傑作といわれる『ベビーシッターと二階の男』をミックス、リメイクしたものだが、陳腐どころか、内容は実に新鮮。格段に進歩した機材を使用しているとはいえ、オリジナル作品とは別物の出来映えである。
主役のカミーラ・ベルを演じるのはジル・ジョンソン。日本では『ロストワールド/ジェラシック・パーク2』『プラクティカル・マジック』でお馴染みだが、昨今はプラダガールとしてデビュー。愛くるしい顔でひとりで敵に立ち向かう”強い女性”を好演、これまでとは違った魅力を発散させている。
『トゥームレイダー』、『コン・エアー』を手掛けたサイモン・ウエスト監督だが、ヒッチコックばりの「見えないものに潜む本当の恐怖」に挑んだこの作品。明日から電話に出るのが怖くなるほどに?大きな反響を呼ぶに違いない
(文・構成 和気 洸)
|