
「両親を亡くし孤児院で育ったミンと、封建的な植物学者の父親に従うアン。
二人は湖に浮かぶ小島の植物園で出会った。姉妹のような安らぎをを覚え、かけ
がえのない人を見いだした喜びの中で、ひそやかに愛を育んでいく
二人。むせかえるほどの緑あふれる植物園がまるで二人だけの秘密の園であ
るかのように、美しい娘たちは幻惑的なエロティシズムを綾なす。だがこの
愛を永遠に続けることは許されなかった」…本作は、どんな犠牲を払ってで
も許されない愛(=レズビアン)を貫こうとする恋人たちの愛らしくも、切
ない、そして哀しい結末を描いた東洋の魅力溢れる映画である。
タイトル自体は、レズビアンを扱った内容にそぐわないものだが、ここに
もダイ・シージェ監督の「特に同性愛をテーマにしたのではなく、あくまで
恋焦がれる二人の人間の話で、その二人がたまたま女性同士だったというこ
とにすぎない。私は二人の関係を批判しているのでもなく、覗き見している
わけでもない」とする“控えめな主張”が隠されているような気がするが、
この控えめさこそが、本来ならゲテモノ扱いされかねないテーマを見事に昇華、
この作品が純度の高い一編の抒情詩に仕上がった原動力になっている。
こう書けば、ありきたりの覗き映画と思うかも知れないが、そうは問屋が卸さ
ない!…『ソルトン・シー』『トゥー・フォー・ザ・マネー』(いずれも05年
)で高い評価を獲得したD・J・カルーソ監督は、アイテムはデジカメにiPo
d、携帯電話のみ。そして味方は二人の親友とパソコンとYouTubeという
極限状況を設定。さらには『裏窓』『ローズマリーの赤ちゃん』『スクリーム』
『テキサス・チェーンソー』など過去のスリラー映画のエッセンスを散りばめる
ことによってハラハラドキドキてんこ盛り、不気味さ超満載の目まぐるしい展開
を構築。一体覗いているのか、覗かれているのか、観る者を後戻りの出来ない恐
怖の展開に引き込んでいく。
さらに、この作品を引き立たせているのが、中仏混血のミレーヌ・ジャン
パノワ(ミン役)とアン役のリー・シャオランの確かな演技である。神秘的
かつ東洋的な美しさもさることながら、女性同士であろうとも“心中”をも
厭わないほどに激しく燃え上がる難しい役柄を見事にこなしている。
あらゆるタブーを跳ね返して自由に生きたい!…急速に近代化、国際化が
進む現代中国の“地殻変動”を知る貴重な資料としても、本作は一見の価値
がある映画とも言えよう。
(文・構成 和気 洸)
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