
「寂しい女を騙すならレイの右に出る者はいないと言われる詐欺師レイモンド
・フェルナンデスと、その恋人マーサ・ベック。結婚詐欺に加え、殺人まで犯す
極悪な一組の男女をひとりの刑事が追いつめていく」…全米犯罪史上最凶最悪、
1940年代のアメリカを震撼させた「ロンリーハート事件」を題材にした実録
サスペンス映画である。
20人以上の女性を殺害したうえ、公判で精神異常者を装ったり、死刑執行前
にはお互いの愛をマスコミに公表するという奇異な行動に出たレイモンド&マー
サ。憎たらしいことこのうえなし!…まさに反省なき犯罪者の“お手本”ともい
うべき二人の事件は、これまでにも『ハネムーン・キラーズ』(1970年)、
『真紅の愛』(1996年)と2度にわたって映画化されたが、本作にあってこ
の“極悪カップル”を演じているのはジャレッド・レト(レイモンド役)とサル
マ・ハエック(マーサ役)。そして彼らを追うのがジョン・トラボルタ(エルマ
ー・C・ロビンソン刑事役)とジェームズ・ガンドルフィーニ(チャールズ・ヒ
ルダーブランド刑事役)と甲乙つけがたい大人の俳優たちの渋い演技は、歪みき
った愛の“終着駅”を描いた強烈かつ危険な物語に一層の重厚さを加えている。
ところで、実際のレイは小男で、一方のマーサは体重100キロを越える巨漢
の看護師だったとのこと。「蓼食う虫も好き々々」であり、体格だけであれこれ
論ずるのはどうかと思うが、一体彼らをかくも凶悪な事件に駆り立てた原因は何
だったのだろうか?
二人が、死刑(1951年)直前に残した言葉は「大声で叫びたい。俺はマー
サを愛してる!世間の奴らが愛の何を知っているというんだ?」(レイモンド)
、「私の物語愛の物語なの。でもその意味がわかるのは愛に苦しんだことのある
人だけ。私は太った、無情な女だと言われ続けた。私は無情でも愚かでもない。
世界の歴史の中で愛のせいだと言える犯罪がいくつあって?」(マーサ)。…身
勝手と批判する前に、敢えて辞世の言葉の裏に隠された心の闇を想像すれば、二
人を暴走させたのは「孤独」。彼らの犯罪を「孤独がゆえの異常に強い愛」が暴
発した?と見るのはあまりにも弁護過剰だろうか。
(文・構成 和気 洸)
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