
「2004年11月1日、ハンク・ディアフィ-ルド(トミー・リー・ジョーンズ)
の元に、息子のマイク・ディアフィ-ルド(ジョナサン・タッカー)が軍から姿を消
したという不穏なニュースが告げられる。軍人一家に育った息子に限って無許可離隊
などあり得ないと思ったハンクは妻のジョアン(スーザン・サランドン)を残し、息
子を探すために帰還したはずのフォート・ラッドへ向かう。地元警察の女刑事エミ
リー・サンダース(シャーリーズ・セロン)が彼の捜索を手伝い、一歩一歩真実を解
き明かしていくのだが、そこには父親の知らない息子の“心の闇”が隠されていた。
そしてこの事件の裏に潜む真実は、ハンクがこれまで信じて生きてきた世界を揺るが
すほどの衝撃的な事実だった。疑うことなく抱き続けた自らの信念を根底から覆され
る時、人はどう真実と向き合い、どう答を出すことが出来るのか」…本作は、ジャー
ナリストのマーク・ボールが米国・プレイボーイ誌に掲載した記事「Death a
nd Dishonor」を元に製作された堂々2時間余の社会派映画である。
監督と脚本を担当したのは『ミリオンダラー・ベイビー』『クラッシュ』など“人
間”を描くことにかけては当代一!と評価されるポール・ハギス。“盟友”クリント
・イーストウッドのサポートを得て、我国ではほとんど報道されることのない、イラ
ク戦争の後遺症に苛まれる現在のアメリカの病巣をハギス監督ならではの視点から鋭
く抉っている。
アメリカが強引にイラク戦争を始めたのは03年。既に5年を経過したが、フセイン
大統領は抹殺したものの、頻発する自爆テロや爆弾攻撃でイラク国内の混乱は相変わ
らず。しかも肝腎の大量殺戮兵器もなかったし、ビン・ラディン師の消息も不明のま
ま。…一体、何のための、誰のための戦争だったのか?…かのベトナム戦争以上に泥
沼状態に陥ったこの戦争は、どう贔屓眼に見ても“不毛の戦い”と言っても過言では
ないのだが、今なお戦争終結の具体的動きはなし。…まさに「何処まで続くヌカルミ
ぞ」…最強の暴力装置を持った国家の傲慢さには辟易とするのは筆者だけではないは
ずである。
06年までにアフガニスタンとイラクに従軍した兵士の10~15%、1万人~2万
5千人が、いわゆるPTSD(心的外傷ストレス)と診断されたと言われている
が、…「殺るか、殺られるか」…極限状態での命の遣り取りがもたらす“副作用”を
アメリカはどう克服するのか?…ラストに映し出される“逆さまの星条旗”がその答
であろう。
(文・構成 和気 洸)
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