
「ジェシー・ジェームズは想像以上にすごい男だった。一緒に行動したいと思っ
て奴のところに行く。あんな男になりたいと思って奴に近づく。でも、どうして
も奴に手が届かないんだ」…「憧れと恐怖、失望と野心」…「その内側に恐ろし
いまでの葛藤を抱えるロバート・レッドフォードの視線の先には、つねに偉大な
る男ジェシー・ジェームズがいた」…ロン・ハンセンが1984年に著した「The
Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford
」を原作として、ニュージーランド生まれのアンドリュー・ドミニク監督がブラ
ッド・ピットを主役に起用、指揮を執った注目作である。
さて、ブラッド・ピットといえば、今や名実ともにハリウッドを代表するトッ
プスターだが、一方ではプロデューサーとしても活躍する、いわばプレイング・
マネージャー。本作でも過去に製作を担当した『ディパーテッド』『マイティ・
ハート』『チャーリーとチョコレート工場』などで見せたプロデューサーとして
の確かな捌きを如何なく発揮すると共に、“悪のヒーロー”として最後は自分を
最も崇拝する腹心の部下に暗殺されるジェシー・ジェームズを演じている。
ジェシー・ジェームズを背後から撃ち、後世まで“稀代の裏切り者”の烙印を
押され続けているロバート・フォード役には、『オーシャンズ11』『オーシャ
ンズ12』『オーシャンズ13』にアンサンブル・キャストとしてブラッド・ピ
ットと共演したケイシー・アフレックが、ジェームズの兄フランク・ジェームズ
には、サム・シェパードが、それぞれキャスティングされている。
神とも崇める存在の“ボス”を、しかも後ろから撃つ!…南北戦争後、189
0年代のアメリカを舞台にした作品だが、全編を通して受ける印象は、過去何度
か映画化された内容とは著しく異なり、西部劇というより“撃たれる方”と“撃
つ方”、双方の内面を描いた心理ドラマの感が強く、こうした点がブラッド・ピ
ットをして製作陣に加わらせた要因ではあるまいか。
さてさて、自分自身の器も考えず、立身出世のために師と仰いできた尊敬する
人物を亡き者にして、代わりに自分がその座に就く!…我が国でも、強盗団では
ないにしろ、豊臣秀吉を討った明智光秀が裏切り者の代名詞のように言われてい
るが、こうした“乱反射人間”はいつの時代にもいるもの。だからこそ人世は面
白いとも言えるのだが…ひょっとしてあなたの会社にも“ロバート・フォード的
役員”がいるかも?
(文・構成 和気 洸)
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