
「満開の桜の花びらが舞う中から現れた美しい日本女性に目を奪われた釜山で
教師を務めるスンウ。祖先が眠る墓苑を訪れた在日三世の尚子。二人の出会いは
前世から定められた宿命だったのか、それとも運命の悪戯だったのか。ふと交差
しただけに見えた二人の出会いが、悲しくも美しい愛の物語を紡いでいく」…人
気脚本家・市川森一が3年余の歳月をかけて書き下ろした“メロドラマ”の映画化
である。
日韓の古都、奈良と釜山を舞台に展開する桜の季節にふさわしいラブ・ストー
リーは、まさに“森一ワールド”満開!…『異人たちの夏』『傷だらけの天使』
『長崎ぶらぶら節』『黄色い涙』などで見せた物語の組立手法の確かさは健在。
「善と悪」「聖と俗」…人間誰しもが内包する二面性を、日本人と韓国人、二人
の男性に愛されるヒロインの生き様を借りて現代女性の心情と成長を見事に描
写。…挫折と再出発。…人生にとって本当に大切なものの“在り処”を幻想的なス
トーリーに塗して語りかけている。
タイトルにある「花影」とは「月夜に照らされた桜」という俳句の季語のこと
だが、これこそ市川森一がテーマとした「光と影」の暗喩。実に憎らしい意匠で
あり、クライマックスの夜桜の下のキスシーンを鮮やかに浮かび上がらせている。
監督、本作が初監督の河合勇人。助監督を務めた『血と骨』『踊る大捜査線』
などとはひと味もふた味も違う味を噴出、異能ぶりを如何なく発揮している。
颯爽と生きる、語弊はあるが、きつい感じの現代女性が“女らしい女”になっていく!…この映画を観た後の夜桜見物がロマンティックのものになること請け合
いである。
(文・構成 和気 洸)
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