
「この海で学んだのです。この山から教えられたのです。勇気を出すことを。
はげますあうことを。あきらめないことを。そして感謝することを」…郷中教育
の精神を受け継いだ鹿児島・清水原小学校で毎年行なわれる<錦港湾横断遠泳大
会>出場に向けて繰り広げられる子供たちの友情と葛藤を描いた物語である。
郷中教育とは、鹿児島に400年以上前から伝えられている教育精神で、戦さ
で親が留守になる間、残された子供たちの風紀が乱れないように年上の者が年下
の者の面倒を見る、いわば子供たち同士の自治活動のこと。いかにも自主性を
モットーにする薩摩藩独自の子供たちのための教育制度だが、これぞ我国の歴史
上、ことある度に重要な役割を果たしてきた薩摩隼人たちのDNA形成に多大な
影響を与えた要因のひとつかもしれない。
それはさておき、小学生にとって薩摩半島と大隈半島に挟まれた4.2キロ
メートルを泳ぐのは、相当な難行苦行。しかし、この試練を乗り越えなければ一
人前と認められないとあっては、そんなことは言っていられない。遠泳大会を控
えて気が気でない生粋の薩摩っ子・吉川隼人(高橋賢人)、謎の転校生・矢代智
明(御厨響一)、過敏性腸症候群の持主・成松雄太(中嶋和也)の“凸凹トリオ”
を中心に物語は展開。雄大な桜島を背景に涙あり、笑いあり。人間の優しさと友
情、親子の絆の大切さを高らかに謳いあげている。
キャストは前述の3人のほか、マドンナ先生役の松下奈緒をはじめ、宮崎香
蓮、高嶋政宏、大坪千夏、小林隆、北村栄基、榎本孝明、羽田美智子となかなか
の豪華ラインナップ。ひとえに「負けるな!嘘をつくな!弱い者をいじめる
な!…昨今の陰鬱な世相はすべからく大人が変わったからだ!…子供たちの純な気
持に “明日の日本”を託すことこそがわれわれの責任!」と主張する雑賀俊郎監
督の期待に見事に応えている。
タイトルの「チェスト!」とは、自分を乗り越えるための合言葉!…看板に偽り
なし!…春休み、親子で是非、見て貰いたい映画である。
(文・構成 和気 洸)
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