
「犯罪に手を染めた捜査官と彼を追う若き捜査官。…2001年2月18日、
FBI捜査官ロバート・ハンセンが逮捕された。20年以上にわたりKGBにア
メリカの国家機密を売り続けていたという彼の罪は世界中に大きな衝撃を与え
た。彼はいかにして裏切りを隠し続けたのか、そして逮捕された裏側に何があっ
たのか?」…本作は7年前に発覚、全米を震撼させた実話をもとに“アメリカを
売った男”ロバート・ハンセンが逮捕されるまでの2ヶ月間を克明に描いたスパ
イ映画である。
そもそも『ロバート・ハンセン事件』とは、FBI捜査官でありながら祖国を
裏切り、FBIのみならずCIA、ホワイト・ハウス、国防総省、国家安全保障
局の秘密文書を長きに亘ってKGBに売り続けてきた二重スパイ=ロバート・ハ
ンセン(現在はコロラド州刑務所で服役中)が惹き起こした事件である。彼が
売った情報の被害額は10億ドルを超えるともいわれ、その中にはKGBに送り
込んだスパイの名前なども含まれており、50人以上の同胞を死に追いやったと
されている“米国史上最大の情報災害”と呼ばれる事件である。
恥ずかしながら、あるいは幸いな?ことに、我国は“スパイ天国”といわれるほ
どに、この手の犯罪には鈍感なお国柄である。時折、マスコミを走らせる事件に
しても、やれ閣僚経験者や外務省の職員がハニー・トラップに引っ掛かっただ
の、某国に自衛隊員がイージス艦の資料を渡しただの、どちらかといえば“三文
スパイ小説”に出て来るような安直なものばかり。少なくとも日本中を驚愕させ
るようなスパイ事件とは無縁の国である。…果たして喜ぶべきか、悲しむべき
か、それだけ平和ということの表れなのか、緊張感が欠如しているというべき
か。…少なくともアメリカ、ロシアなど諸外国にあっては冷戦構造崩壊後にあっ
ても日夜、命を懸けた熾烈な情報戦争を繰り広げている実態を教えてくれる一見
の価値ある映画であろう。
監督は“実話ドラマの鬼”と呼ばれるビリー・レイ。本作では脚本をも担当、息
が詰まるような緊迫した展開、その果てに訪れる哀しいラスト・シーンまで
丹念な描写はさすがである。
(文・構成 和気 洸)
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